「んー、まだダメか」
「ダメ」

気持ちが入ってないし、ダメ。
二度拒否の言葉をあげながら、は頬杖をつきながらも笑ってやった。
花束を持ったまま、シンドバッドは少し顔を曇らせつつ―――あくまでも、大人の対応として肩を落としてみせる。

「形だけでも正妻は迎えたほうがいいかとは占い師的には思いますよ、そのほうが吉兆って出てる」

水晶玉を弄りながら、は言う。
シンドバッドはそれは出来ないと首を横に振った。彼には彼なりの何かしら事情があるらしい。特別気にするわけでもなく、水晶玉の中にルフを込めながらは小さく言葉を紡ぐ。
淡いオレンジの光は二つに別れ、ぐるりと水晶玉の中をホタルのように舞―また再び交じり合っていく。ルフの流れを占い先見していくことしか出来ない魔法使いになりきれないにとって「占い師」としてできることは限られている。

「仕えるも悪くないですが、一介の占い師のところにこんなホイホイきちゃダメだと思いますよ、シンドバッド王」
「それも無理難題だな、は呼んでも来てくれないじゃないか」
「こう見えて忙しいんですよ、恋愛相談とか、仕事のアドバイスとか」

彼女の言い方が面白かったのかそれはすごい、とシンドバッドは賞賛の声を送る。持っていた花は仕方ないのでに対処を頼むことにして、テーブルの横にちょっとだけ置いてやった。真っ白の、高級な花は静かに咲き誇る。

「そもそも花は温かいところにあると開いちゃうんですよ。ヤムライハに冷やしてもらわなかったんですか、空気」
「それは初耳だ。なるほど勉強になるな」
「……で、王はいつまでここにいるつもりです?」
「それはもちろん、が俺のところに来たらだな」

それはじゃあ一生ないですね。
は白い歯を浮かばせて笑ってやる。国民ではあっても王宮でその専門を占うことなど、は望んでなど居ない。
占星術ができても、彼女は魔術は扱えない。そういった仕事は魔導師のトップにいる八人将のヤムライハだとかが居るであろうし、彼女は着の身着のまま、気分によって店を開いてやってくる色々な人間に占いという名の背中を押すという行為を繰り返すだけだ。王の専属になりたいと思った覚えは一度たりともない。

「ダメかぁ」
「ダメですねえ」
「じゃあどうすれば王宮に入る?」
「……王様、それは無茶ぶりだと思います」

精々花束を受け取る日が来たら考えても上げてもいいくらいってことで。
そう言い切ったに、彼は頗る上機嫌になって、その花を央無理やり押さえつけると「じゃあ、また後で迎えにくるな」と言い残してあっという間に、まるで風のように去っていった。
取り残されたは白い花と、彼の出ていった先を見比べて――、ふと、もしかしなくても今、墓穴を掘ったのではないかと顔色を代えてみせる。だがそれはもう、後の祭りだ。

ただ静かの花は香る。
優しく、優しく。


……後日、王の命で来た軍人たちには気付かれないようにやっぱりと溜息を零してやった。


20121023
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