にとってカリガネとは兄であり、サザキとは弟である。
……これを口にしたら最後延々とサザキから解せぬという反論が返ってくるのだが、そこは無視を貫き通す。
カリガネが過去に女と何があったのか知らないわけではなかったし、彼の話は一族でも有名な話だ。
だが、必要な要素はそこではない。
彼が翼を呪って、飛ばないことが彼女にとっては不服なのだ。飛べなくなった鳥。誰よりも大空を舞うことが出来る鳥。
心の傷はどうしようもないとは知っていても尚、彼の大空へ羽ばたいていく姿が好きだった。手を伸ばして、カリガネ、と彼を呼べば逆光で見えない彼がすこしばかり笑っているような気がしたからだ。
「」
「……うん、今いく」
その翼を羽ばたかせて、彼女はふわりと浮く。少し先でサザキが遅えぞおと呑気に笑っていた。空はどこまでも青く、澄んでいて、空気も美味い。晴れやかだ。
何度か呼吸を繰り返し、体を大きく伸ばせば彼女のココロに合わせるようにふわり、翼が羽ばたく。カリガネは木で休んで、彼女たちを見ていた。時折アルエットが呼べば仕方なしとばかりに翼を羽ばたかせてやってきてくれる。
兄のようだ。
……否、兄ではないのだけれど。
「なんだ、」
「ううん」
彼女は説明しようのない気持ちを抱きながら、カリガネに首を振る。サザキは幼馴染達を放っておいてアチラコチラへと飛び立っているあたり、落ち着きがない。……これもまた、昔と何一つとして変わらない。
すう、と深呼吸をひとつ。
「いこう」
羽ばたいたら戻らない渡り鳥。何度も何度も移住しながら、やがて元の場所へと戻ってくる。繰り返し、繰り返し。
「カリガネ、疲れたらおぶるよ」
「…………がか?」
「がやったら沈んじまうな!」
そんな笑い話を繰り返して、舟を失いながらも海賊たちは空を舞う。