「貴様は本当に可愛げがないな」
「……褒め言葉としてお受け取りしますよ?」
ふわりとが笑うので、守はしれずとして顔を顰めた。
彼女は大体守の言う嫌味も小言も皮肉も受け流す傾向にあるからか、にこにこと笑っていつもどおり化粧水と呼ばれるそれを手に叩いてみせる。
「化粧師である手前、もっと華やかであるべきではないのか?」
「化粧をふんだんにしては、実演する際に難しいでしょう」
「……分からんな」
ええ、きっと、そうでしょうね。
指先から彼女はいくつもの夢を形付けていく。その姿を見ながら、守はひっそりと溜息を零した。
「貴様、俺の話を大半聞き流しているだろう」
「まさか」
「」
「はい?」
ぐい、と腕を捕まれ、そのままは彼の腕の中に抑えこまれた。
何事かと顔を上げるも、彼の腕が邪魔をして見ることは出来ない。何度か暴れてみるも、最終的に諦めてしまう。
「貴様は、可愛げがない」
「ええ、そうでしょうね」
「……だが」
「だが?」
常に貴様がいると退屈はしない。
さらり、と流れた黒髪が妙にくすぐったくは少しばかり笑う。
この人は全くを持って素直ではない。もちろんそんなことだって知っている。伊達に長い付き合いではないのだから。
「そうですね、光栄に思います」
「うむ」
「……でも、私が婚期遅くなったのは守さんのせいなんでしょうねえ」
「それは知らん」
いえ、絶対そうですね。知らんと言っている。
ああでもない、こうでもないと喧嘩を少しした後に、二人揃って可笑しさから、ふわりと笑ってみせた。
彼らの放つ空気は独特で、彼らの関係も一言では難しい。仕事仲間、知り合い、色々が当てはまる中で――は、そんな関係を楽しいと思う。そしてこの関係に言葉を作るのならこれもまた愛の形だろう。多分、きっと、お互いに言葉にすることは一度たりともなさそうなのだが。
「宮ノ杜はいかがですか?」
「さてな、まだ何とも」
「そうですか」
「気になるか?」
ならばいつでも来れば良い。
引き寄せられて、額をあわされ、夫婦でも恋人でもない状況なのにこんな関係になっている状態がおかしくて、はくつくつと矢張り喉を震わせて笑った。
2012.11.14