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Cappuccinoがお好きでしょう?

、あなたは本当にカプチーノが好きですね」

眠気に耐えながらテーブルに肘をつき米神を抑えるに、ルカは苦笑しながら淹れたてのカプチーノを差し出してやった。食堂にはまだ幹部は集まりきっていない。
彼女はああ、だの、うん、だの曖昧な返事をしてため息を付く。


「また、寝不足ですか」
「また、じゃないもん」

今回は寝不足というよりも仕事疲れなだけだもの。
カプチーノのカップを持ちながら、はできうる限りのため息をついた。難色を示す表情にルカは呆れたようなため息を付き、手袋越しにの頭をそっと撫でてやる。

「あなたは働き過ぎなんですよ、少し休みなさい」
「……マンマみたいなことを言うのね」
「誰がマンマですか」

手のかかる幼馴染のせいですよ。
手をはなし朝食をマーサから受け取った上でと向かい合わせにルカは腰掛けた。
はパンをちぎりながら「ルカこそ今日ははやいのね」と平時のスケジュールを思い出しさり気なく聞いてみる。彼の朝はタイを締めて律儀な格好をして彼の特別な「お嬢様」を起こすところから始まる。そして、父親譲りの血のように赤く長い髪の毛を梳いて、結んでやることが日課だ。
だから、ルカがこうしてと朝食をとることは珍しい。にとっての日常は諜報部から始まり、リベルタとダンテと、数の多い諜報部との朝食なのだから、どう考えても彼ら二人が揃うことなど滅多にない。

こそ今日は珍しいですね」
「…船を出してるしね、今日は。私は先にやることがあったから留守番」
「海好きのにしては珍しい」
「誰かが残らなきゃ諜報部の意味もないでしょう」

諜報活動に出るメンバーを選出してその中継ポイントとして彼女は今日一日在らなくてはいけないし、仕事も山積みだし、本来の彼女の仕事内容である港での管理は今日一日は全く出来ない。
日差しが入ってくる食堂で、彼らは二人だけで並んで朝食をとる。時に悪態をつきながら、時に冗談を言い合いながら。
ルカは帽子を外し手袋を外した上で、朝食のコーンスープを飲んでいた。

「お嬢様はいいの?」
「……今日は、いいんです」
「ふうん」

は深く聞かないことにした。何故ならばお嬢様、と呼ばれているその人はこの組織のトップであり、その片腕に存在する参謀役こそが、ルカの悩みの種であるのだから大凡想像はつく。不憫な、と口にすることは許されないがルカがめそめそと泣くことが減ったことだけでも有り難いのかもしれない。
フェリチータが優勝した際の、片腕に選んだパートナーがジョーリィだったとき、ルカはまるで魂が抜けたようでもあった。彼のせいでフェリチータは心を閉ざし、失っていたのに、とすら酒で潰してぼやいているのを耳にしたのだから彼らの怨恨はまだ終わっていないということだろう。にとっては、それもまた日常の1ピースになりかけていたので、改めてルカの心の深さを知って、心から同情した。

「……なんですか、、人の顔を見て」
「別に。お嬢様お嬢様言わなくなって成長したんじゃないのかなって。30前になって漸く」
「あなた時々ひっじょーにトゲのある言い方しますね」

カプチーノばっかり飲んでないで人の話ちゃんと聞いてるんですか。口を尖らせて言うルカには唯、聞き流しながら苦笑するだけだ。
スクランブルエッグに胡椒をふりかけた上で、ルカに今日はいい天気だといいね、と世間的な普通の会話を振ってみせる。ルカは少し瞬きをしたが、直ぐにええ、と窓へ視線を投げかける。
潮風の吹くこの島では海の天候に左右されやすい。レガーロ晴れであって損はないのだ。


「お昼」
「はい?」
「お世話係が暇なら、お昼、食べにいきましょ」

言葉の真意を拾い上げられず、ルカは唐突なの誘いに目を白黒させた。だが、はカプチーノに口をつけるばかりで、返事を急かすわけでも待つわけでもない。

「……そうですね、少し考えさせてください」
「どうして?」
「私はあんまり女性に誘われることが少ないのあなた知ってて言ってるでしょう!」

お嬢様しか眼中になかったから。という付け加えの言葉は無視してやるのが得策だったので、は何も言わないでおいた。
その上で、にこやかにルカを見つめ、そう、とだけ言い返す。
ルカはベーコンを一枚食べ終えると、フォークを皿の上に置いて一息つく。だが、直ぐに顔色を変えてああ、でもうーん、だのと悩みの声を上げ始める。

「……私はあんまり気が長くないんだけど?」
「あああ待ってくださいよ! そうだな、ええと、じゃあ、そのカプチーノ飲み終わるまでせめて待ってください!」

カプチーノのカップは既に半分ほど液体が減っている。
ルカの唐突な申し出に、は吹き出して笑ってやった。それにしたって、テンパッてしまうにしても、彼の言葉は支離滅裂だ。だがそこが面白いのかもしれない。


「ええ、早めに回答してくれるの、待ってる」

そういって、彼女は朝食を再開した。
……彼女のカップの中身が空になるまでにおよそ15分。本気で悩み続けたルカの姿が、あったとか。

20121223
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