吐き捨てるようについていない、とはぼやいた。大きな箱に詰め込まれてはや数時間ほど。
退屈しのぎに一度昼寝をしたが、現状はあまりよろしくない。とりあえず好転はしていないようだ。
「の、割りにはオメー冷静なのな」
くるりと視線を這わせているとミスタは胡座をかきの様子を伺っている。全長ニメートルくらいほどの横長の箱。その逃げ道のない状況でミスタの相棒たちはの様子をよそに楽しんでいるようでもあった。
「……さて、どうするかな」
「ピストルズで穴をあけてみるとか」
「無理だな、腹減ってこいつら働かねーし」
情けない失態である。は壁を触ってみるが紙ではない。木?それも違う。鉄のような肌触りでもない。
とかく、暗いこの箱の中をいかに脱出するかが今のミスタとに課せられたミッションである。
「ブチャラティがいればどうにかなったかもなあ」
「うーん、それにしても誰がこんなことを」
「知るか」
さてはて、困った。ミスタのスタンドは現状力になってくれそうにはない。
ともなれば、彼の拳銃の腕前と、自分の力で切り開いていくしか無いらしい。
「うーん、困った」
「つかよぉ、居ないことに気づいてブチャラティたちが助けてくれるだろ。多分」
「…………ミスタは前向きというか、大雑把というか、すごいね」
「そーかぁ?」
呑気に欠伸をするあたりだとか、いろいろすごい。
度胸があるということだろう。体育座りのままどうしたらいいのか分からずオロオロしていたは自分を少しだけ恥ずかしいと思った。
実際ミスタが「冷静である」と評したが、そうではない、そう繕っているだけだ。
ざらりとした肌触りの箱にふたりきりだというのにロマンチシズムのかけらもないのは、相手がミスタだからだということもあるのか。
ワキガ臭が嫌だと真顔で愚痴っていた(これは親愛を持った関係を持つ彼女だから言えるのかもしれない)トリッシュを思い出す。
「ミスタ」
「あ?」
「ここを出たらフレグランス買いにいきましょ」
「……トリッシュみてーなこと言うなぁ、オイ」
ピストルズが浮遊して彼を囲み、笑う。
どうやら空腹ではあるものの、この現状を把握してミスタを励ましているようでもあった。
つられても薄く笑う。少し久しぶりに笑った気がした。
「弾丸打ち込んでみるか」
「危ないんじゃないの」
「ここでうだうだするよりはましだろ。援護しろよ」
「……何をどう援護すればいいの?」
意を決するミスタにツッコミを入れれば彼はうるせぇ、と笑った。
最初から銃を使わなかったのはこれが「敵の策略の1つなのではないか」というの考えからだが、どうやらミスタはしびれを切らしたようだ。
はそうなったミスタに茶々を入れながら承知を返す。
それから、数弾の引き金を引いた音が轟く。穴が開いた場所から扉(という名の側面)を蹴っ飛ばす。だが扉は開かない。
重要なのは「誰かにこの音を聴かせることである」とミスタはに言ったので、は頷き返しその開いた場所から周りを見てみる。どうやらどこかの草原のような場所だ。
……それからしばらくして。無事に彼らはジョルノ・ジョバァーナの手により救われたのである。
「ついてなかったですね」
「ええ、本当に」
けれど、怖いとは思わなかったの。多分ミスタのお陰で。
ミスタに聞こえないようにジョルノに言うと、彼はそれはそれはと少し楽しそうに笑った。前方でナランチャとミスタが何か言い合っている。トリッシュがころころと笑っていた。
先導するようにブチャラティとアバッキオが歩く。その後ろを地図を確認しながらフーゴがああでもないこうでもないと意見する。更にその横でナランチャが茶々を入れていつものようにド低脳が、と彼になじられている。ミスタは状況的にずっと緊張感を持っていたためか小さく欠伸を繰り返した。
は、ジョルノの横をすり抜けてミスタに近づくと「グラッツェ、ミスタ。助けてくれてありがとう」と笑う。
「は?いやオレなんもしてねえし」
「そう?それでもお礼を言いたい気分だったから、まぁ受け取っておいてよ」
真のイタリアーノは紳士たるものじゃあなくちゃ。
その言葉にもれなく全員が振り返る。あのブチャラティまで。
「……なんつーか、オメー大物になるわ」
しみじみと言ったミスタには爽やかに笑い返してやった。
2013.09.16