明けないてのひらの星

「首筋に星のマークがあるのはなにかの証?」
「……ああ、これですか。これはうまれもったものです」

 ジョルノ・ジョバァーナはあまり気にせずに首元を見せた。その姿が少しばかりエロティックではあったが、は特別意識するわけでもなく「へえ」とだけ返す。
 以前彼に会いに来たという「空条承太郎」という青年は、ジョルノ・ジョバァーナと同じ星のマークを持っていた。
 何かを指し示すかのような引き合わせにグイード・ミスタはからの喧嘩に対する厳重注意を受けながら笑っていたものである。
 曰く、ジョルノ・ジョバァーナの父親に関与することらしいが、はあまり興味もない。
 例えばそれが自身のスタンドという能力に関することだとか、例えばそれが自分と彼らの関係に関係することだとしてもだ。

 グイード・ミスタ曰く「そういうところが多分いいところなんだろ、お前」らしい。
 彼はの注意を物ともせずひたすらに勝手に菓子類を貪り食っていた。
 ナランチャ・ギルガに奪われないためだとか、セックス・ピストルズが彼を急かしているからだとか理由は様々だったが、の話を効いていなかったのは誰がどう見ても明らかである。
 …………それでも、彼に「次回からは気をつけるように」という一言で終わらせたのは、にとって気にならないふりをしていても気になったから、なのかもしれない。


「気になりますか」
「どうしてそう思うの?」
「視線がずっと此方を向いているので、あんたにしては珍しいなって」

 いつも淡々と物事をこなしているのに、今日は随分饒舌だ。
 ジョルノ・ジョバァーナは笑っていう。その表情に面食らい、はどうだろうねと笑い返すだけでどうにか踏みとどまった。
 結局のところ、パッショーネの人間には見ぬかれているのかもしれない。ブローノ・ブチャラティは以前、に「うちのチームの連中は一筋縄じゃあいかないぜ」と。その理由を彼女は改めて知り、ただただため息を付かざるをえない。


「それ、隠しておかないと目をつけられるかもしれないね」
「おや、心配してるんですか」
「余計な抗争はないほうがいいじゃない」

 あんたっていつもそうですね、とジョルノ・ジョバァーナは言いながら妙に近い距離でに問いかける。は「どうだろうか」と少しばかり考えたが、矢張り面倒事は御免被りたいので、自分の選択肢は間違っていない気がする。

「触っても?」
「触りたいなんて余程の物好きじゃあなかったらなんなんですか」
「好奇心旺盛だから、うん」

 手のひらにすっぽりと覆われた星の証。空条承太郎の他にも、何人か同じ証を持つ人間が居るのだと、そう彼は言っていた。は少し考えた後に、ジョルノに書類を片手で手渡した。

「けっこう普通なのね、あざも、あなたも」
「……どういう意味で?」
「さあ」

 少し思ったことを言っただけ。の笑いにきょとんとジョルノは目を瞬きさせる。これだけみるとどこにでもいる普通の少年だ。とてもパッショーネの人間だとは思わせない。はブチャラティの言っていた言葉を思い出し、矢張り彼らは一筋縄ではいかないということを実感した。
 手のひらにほんの少しだけ触れた星形の痣。
 何度か指の腹同士をこすってみたが、結果は何も変わらない。

「スタンド使いがスタンド使いと惹き合うのと、これも何か関係があるのかもね」
「……さあ、どうだろうな、僕には分からないけど」

 ただ、こうやって何気なく会話をするのも悪くはない。
 二人は気づいていない中で共通認識を持ち、少しばかり笑いあった。


2013.08.03