君は僕のヒーローだ


例えば顔のかっこよさとか、背の高さとか、品の良さとか。
そう言う点は確かにヒーローとして必要な部類だと思うの。でもそれだけじゃ多分、ダメなんだよ。

はくるくる歌うように諭すように言うので、それが妙に癇に障る。
英雄論などどうでもいいし、何よりのいう英雄論では、アイデンティティを否定されてしまうのだ。


「魂でそういうのは分かるんだよ」
「魂ですか、また漠然としてる挙句にわからないものを持ってきましたね」
「マスターは目には見えないものを信じたがらない人なんだね?」

はその身体を消して、天井から頭を吊るす。
なんてシュールでホラーな光景だろう。そのままぺしんと頭をはたけばいたい、と声が上がった。

「あなたみたいな非現実な存在に付き合わされてるんですから信じない訳にはいかないでしょう」
「どーかなー?」

食えない笑を浮かべるこのランプの魔人はジンのくせに王を選ばないらしい。
ダンジョンは?この女の選ぶ基準は?それらは存在していない。がこの世界ではない何処かからの漂流物だからだ。アラジンは君はどこから来たんだろうね、と言っていた言葉を思い出した。


「ジャーファル!」
「……なんですか」
「マスターは私のヒーローになってくれないかなあ」

たまに彼女のこぼす願いを聞いては、それを黙殺する。
彼女は解放を望むが、それは叶うこともない。解き放ちはしない。理由は彼女が駒だからだ。
どうですかね、とだけ答えておくとはマスターはつまらないね、と吐き捨てるようにぼやいた。


「ジュダルに拾われてたら扱いもっとひどかっただろうけど、あれのほうが可愛げありそうな気がしてきた」
、撤回しなさい。いますぐ。即刻」
「えー、やっだー」

彼女は笑ってぐるりと蛇のように私を取り囲み、ぺたぺたと頬をその青い肌で触った。

「まあ、マスターはヒーローってより悪人ヅラだよね」
「ぶっ飛ばしますよ」
「ごジョーダン!」

そうして、あっという間に装飾されたランプにひきこもってカタカタランプを揺らした。

「……魂ですか」


それなら、貴方の方が余程シンに近いでしょうに。
自分の中の英雄を思い浮かべ、そしてそんな人間二人もいらないな、と苦々しい気持ちのまま彼女の媒体をこつん、とつつく。
「船酔いする!!やめて揺らさないで!ランプんなか狭いから!!」と非難の声が聞こえてきて、どうにもこうにも……おかしくて笑った。

7.31*君は僕のヒーローだ