君と私と放課後と

おおよそ彼の得意技は「寝落ち」である。

今もこうして、寄りかかってきて、すやすや寝息を立てている。当人はそれでいいかもしれない。
だが、私は微塵足りともよろしくない。肩はこるし顔は近いし良い香りはするし、何なのだ、とも思う。

図書室で寝る暇があるんだったらさっさと自室に戻って寝ればいいんだ。そうも考える。異論を唱えると、この男は繰り返して言うのだ。眠ィんだからしょうがねえだろ。全然しょうがなくないのだが。寧ろいい迷惑なのだが、何を間違えたのか私も「じゃあしょうがない」と納得してしまったのだ。この時ティトスがそれは違うよといってくれればよかったのだが、彼はそんなことを言ってくれなかったし、混乱に陥っている私を楽しんでいる様子もあった。

…………何て性格の悪い。

そうも思うのだが、元はといえば、スフィントスが悪いのでぐうの音も出ないのである。ちなみにアラジンに関しては除外だ。彼は私に関しては随分良くしてくれるし私としても地元にいた子供達の雰囲気とよく似ていて邪見にできない。

「お前たち、そろそろ下校時間だぞ」

「はい、マイヤーズ教官」

そうして、いつもだいたいこの時間になるとマイヤーズ教官が私に声を掛ける。その時、彼女はいつも微妙な顔をする。
多分、普段喧嘩をよくしている私とこの男が一緒にいて、しかもこの男が寝ているから以外なのだろう。そうだろう、私もそう思う。何の因果か、私の肩はこの男―――スフィントスにとって、昼寝の定位置になっているのである。しかも、天邪鬼なことに寄りかかり方が面倒なのだ。肩というより背中?なのかもしれない。要するに身動きなんてものは最初から取らせる気がない、背中合わせの居眠りなのだ。

「……起こすか?」
「いえ、自分で起こすので大丈夫です。ご心配有難うございます」

マイヤーズ教官はそうか、と言い残し、去っていった。
取り残されたのは私とスフィントスの二人(正確には二人と一匹)だ。
少し身体をずらし、スフィントスを見てみる。…………眉間の皺は微塵もとれず、ぐうぐうと眠りについている。なんて平和そうな顔なのだろう。何だかむかついたのでそのままどついてやろう、そう思って身体を動かした……が。

そういえば、下校時間にはもうわずかだが時間がある。アラジンは図書室に迎えに来てくれると言っていたはずだ。それを待っている間くらいは、静かにしてやってもいいような気がした。

別に他意はない。だって不用意に起こされたら誰だって不機嫌になるものでしょう?それだけのこと。

めんどくさい性格だとスフィントスはバカにしそうだ。一応、私から反論するならばあんたにだけは言われたくない、ということだ。喧嘩友達?というのがあっている。

周囲のルフは彼の貪る惰眠に同調するように寄り添い、彼の周りを旋回する。

「あんたって」

本当に、ばかな奴。
そう思いながらも眠りにつくこの男をもう少しだけ観察してやろうと私は視線を送り、アラジンを待つべく本のページを開いた。


2013.08.28 WEB拍手ログ