知らずに甘えていた事実をスフィントスくんあたりに言われて恥じて仲直りするところまで考えたものの、割愛しました。
信じられない、と彼女は毒づいた。同室の友人はコドル2からコドル4に降格してしまったからだろう、のことをどことなく避けているのがわかっている。
だが、そのまっ黒のローブを羽織った上で靴を鳴らし苛立ちげに歩きながら今朝のことをは振り返り、毒づいた。その前日までの課題を黙々とこなしていたからだろう、声をかけられない集中力から彼女はより早く眠りについた。
一方では魔術式に夢中になりすぎて、課題を終わらせた後も小論文を自ら書き上げ、そして満足し眠りについた時には既に同室の彼女が眠りについてから2時間は経過していてのことだ。
……結果、彼女が目を覚ました時には既に同室の友人は部屋を出ており、置き手紙には「起こしたけど起きなかったので先に朝食に行っています」と達筆な文字で、彼女の出自であるレームの文字で書かれている。
わかっている、これは完全なる八つ当たりだ。けれど、起こしてくれたって良かったのに。
というか、前だったら起こしてくれたのに。
彼女は己の杖を足元に向けて、2,3言葉を紡ぐ。それだけで彼女の脚はぐんとスピードを上げて、まるで軽やかな風になったかのようにふわりと浮いた。
論理としては自分の体重を軽く浮かせる風魔法を唱えただけなのだが、授業に遅刻するよりは余程いいだろう。彼女がかけ出すと、たまたま同じクラスになった同級生は彼女の姿にあ、と小さな声を上げて――そうしてそっと何も見ないように目を閉ざした。
扉を開けると、空色の髪をした少年とは目があい、恥ずかしさから顔を俯かせる。
彼のことを知らない人間はいなかった。彼は「コドル6から一気に昇格した」という噂の的になっている男子である。名前は確かアラジンといった。
彼はの横に座るとにこにこと笑顔を浮かべ、嬉しそうに笑う。
今日の実験はそれぞれの魔法を二種組み合わせた魔法を編み出すことである。は掌中にある香水瓶を使いながら光と水魔法を組み合わせて幻影を幻影を生み出している。見慣れているのか、エリオハプトの少年が「なんだ、蜃気楼か」と言っていたのもまた印象的である。
アラジンはにこにこと友人各位(片方は流石にも知っている、成績の良いティトスだ)に手を振った上で「今日はさんと話してみたかったんだよ」と言う。
はこの少年にデジャヴのようなものを感じずにはいられない。掌の中に収まっている蜃気楼を杖て弾き、光の粒がさらさらと水と一緒に溶けていく。アラジンは首を傾げるばかりだが、は彼を通して、己の出身である場所に心をはせる。誰もが無口になる場所、といえば良かったのだろうか。
海鳴りだけが耳に届いて、戦いの雄叫びが劈く。
ごめんね、と彼女は小さく笑った。
泣きそうだったなんて、思い出し泣きだなんてやってられない。は掌にもう一度魔法をかけて、きらきらと光の粒をいくつもの色を得て――アラジンの前で手品のように形を変えた。
それからというもの、アラジンという少年がに声をかけるようになったせいか……彼女は今、こうしてティトスやエリオハプトの少年……スフィントスと一緒に居る。
同室の少女との関係はまだまだ復興中だが、以前よりは大分話せるようになった。
ああでもない、こうでもない。
そんな言い合いをする3人を見ながら、にこにことアラジンは楽しそうに笑った。
知らずに甘えていた事実をスフィントスくんあたりに言われて恥じて仲直りするところまで考えたものの、割愛しました。