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ココロの跡
2010.06.24
君が知らぬ我が心
彼女は気まぐれである。
直ぐ調子に乗るし直ぐ機嫌が悪くなるし、ふらふらして適当で大雑把で細かいことを考えているようには見えない。


「あれー隊服?」

呑気に団子食べて茶を飲んで、知らない男と喋ったりしている姿を見るのは矢張り気分がいいものではない。
仕事中じゃないのと団子の串を指で弄び言う彼女に「仕事中だよ」とだけ返す。ああもう俺だって仕事に集中したいのにお前がさせてくれないんじゃないか、といっそ罵ってしまえれば楽なのに、実際のところかっこつけの性格がそれを断固として許してくれない。
は少しだけ首をかしげて「ふーん」と分かっているのか分かってないのか返事を返している。

「じゃ、しんちゃん、また来るねー」
「おう、またなー」

御代を男に渡して彼女はからんからんと下駄を鳴らし俺の前までやってくると腕を組んで「珍しいね」と笑う。

「何が」
「平ちゃんが一人って」
「俺だってものを考えることはあるぞ」
「ふーん。あそこのお茶屋さんね、みたらし団子すごい美味しいんだよーお勧め」

しんちゃん。
そう親しげに呼んでいたことが妙に引っかかったが、自身が気にしていないので言葉にすることも出来ない。
悶々と考えているとからんからんと彼女の下駄の音が耳に響く。

「お前、草履どうした?」
「鼻緒切れたから今日は下駄」
「うーわー不吉なこと起きるぜー」
「ふふーんだそんな迷信しんじませーん」

彼女はココではないところからきた人間だ。そして、俺はここに生きる人間だ。
何もかもが違う。
例えば喋り方や、好みや、歩く早さ。上げていけばキリがない。
は俺が好きなんだろうか? ……そこまで考えて首を横に振った。有り得ない。答えなんて目に見えているからだ。恩義と親愛と、恋愛感情は違う。


「あ、俺仕事あるから行くわ」
「んー、走って転ばないようにねー」
「ほっとけ!」

いつかはいなくなる。それは知っていることだ。分かっていることだ。
だというのに。それだというのに、何故こんなにも胸が騒ぐのか。
…………答えはわかっている。だけど、何故俺はこんなにもあいつを好きになったのか、よく分からなかった。

「あーもー!くそー!」

いっそ出会わなければよかったのか、と少し考えたが、結論としてはそれは否だ。断固ありえない。
そう考えたら、やっぱり「出会うべくして出逢った」としかいいようがないのだろう。
好きだ、馬鹿。伝われ馬鹿。ばーか、ばーか。
こぼれだしそうな感情をため息にして空を睨みつけて……仕事に戻らなければならない気持ちを陰鬱と抱えながら、町へまた一歩踏み出した。
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