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speak or data?

情報の波に飲まれて死んでしまいそうだ。
何度も何度も流れてくる情報は彼女をかき乱し、渦の中に足を滑らせて突き落とす。音が、すべてが煩わしく耳を塞ぎ目を閉ざす。
ぐるぐると世界は回り足を滑らせ――何度も何度も彼女を呼んだ。
パソコンのキーボードを叩く音が木霊する。何を考えてこんなことをしているのだろうか。画面越しに映るチャット風景はいつもと変わらず、芝生が生えたり、タメ口だったり、敬語だったり。
文字が情報となって、まるでセンター街の真ん中に立つように、五月蝿い。

「……ふー……」
「主」
「……ああ、ディルムッド」

何か用事?首を傾げた彼女に、ディルムッドは否、と答えた。
2つの槍は一瞬にして姿を隠し、青白く輝く彼女の手元にあるパソコンと、金色に輝く彼の瞳が妙なコントラストを生み出している。


「……頭痛い」
「やりすぎなのだろう、単に」
「……貴方って、私に対して容赦無いわよね」

そんなつもりは毛頭ないのだが、というディルムッドを片手て遮る。言い出しても不毛なことだ。さしたる意味もない。重たい頭を振り切ると、椅子の背もたれに体重を預ける。
くるくるとタイヤのついた椅子は体重が掛かることで彼女をぐるりと回し、自然とディルムッドと視線を合わさせた。
彼の双眸は相変わらずを見つめている。

「どーしたの」
「いや、こうして見ていると普通の女性なのだなと思って」
「こうしても何も、私は普通でしょう?」

にたりと笑う彼女に、仕方なしとばかりにディルムッドは溜息をついた。変な主を引き当てることは良くあることではあるが、彼女は忠誠を誓うには若く、愚直だ。
パソコンにディルムッドは視線を移す。画面の向こうのチャット画面には、彼女がいつも使っているアイコンはない。

「情報過多になると、ほしいものと切り捨てるものを分けていかなきゃいけないから嫌なのよね」
「ああ」
「ディルムッド」

頭が痛くてしょうがないんだけれど、どうすればいいかしら。
目薬を指し、淡々と述べるにディルムッドは跪き、彼女の手の甲に口付けた。

「我が主の望むままに」
「甘いんだか厳しいんだか、分からない発言」
「さて、君はどう思う」

生意気。ディルムッドの鼻を摘んでは小さく笑った。

は人ではない。そんな彼女が主に選ばれたのは奇妙な縁だとも感じるが……ディルムッドは彼女を主として選ぶのも悪く無いと思っている。

……改めて、自分で言うのも何だが、変な主従だ。
気付かれないようにそっと笑ってやる。小さな背中はいろいろなことを背負っているように見えた。

2013.08.25 WEB拍手ログより
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