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エブリヤングライフ!

「寒いわ、それ」

何言い出してるの頭ダイジョーブ?妙な感嘆文のように言い出すアヴェンジャーにとりあえずは右ストレートをかましておいた。……勿論避けられることは目に見えていたので、彼の後ろにいるアーチャーにぶつかるように。だ。
彼女の予想は大凡あたりで、彼の後頭部が思い切りアーチャーの肩にぶつかった。

「わー待て待て今のは明らかにコイツが悪ィだろ!」
「ほう……?」

平和だ。そんな二人のやり取りを横目に、イヤホンをさっさとつければ士郎が苦笑する声が聞こえてくる。恬淡とした士郎に視線だけ訴えればイヤホンを外せというジェスチャーが帰ってくる。渋々とが外せば緑茶をぽん、とテーブルの上に置かれた。

「なんであの2人、ああなってんの?」
「あーなんか、口説き文句を言ってみよう、みたいなのがあってさ」

音読したらあいつ笑うからちょっかいかけたら、アーチャーにあたって悪化した。要約したの言葉に士郎はやれやれと肩を落とす。アーチャー、と呼ばれる彼は未来の自分の姿である手前、あまりからかわないで貰いたいというか、血気盛んなのはやめてもらいたいのだが、だが同時に一緒になって盛り上がっているアヴェンジャーも自分である。
衛宮1,2,3と称したにがっくりと肩を落とすところまでが一連の流れである。もはやお約束なので、ノータッチだ。

「で、言った言葉は?」
「……君の笑顔を一人前」
「それは、ええと……なんていうか……」
「私音読しただけなのに!」

なんでこうなるの!わっと泣き出したにあー、だのうー、だの曖昧に士郎は返事をしているとアヴェンジャーが独特的に笑い声でに嗤う。ちなみに彼はこの時点で一枚の布がべろべろにアーチャーによって剥がされそうになっていて決して余裕を持っている暇などないわけだが……はあまり気にしていないのかアヴェンジャーに見向きもしない。巻き込まれた士郎はあちらとこちらをキョロキョロ見た後に、仕方なしにため息を付いた。彼にはつくづくよくわからないものがついて回る。それもここ最近急速に。やれサーヴァントから始まり、ホムンクルスだの何だの、終いにはのような異世界の人物だ。どこをどうしてこうなるのか分からない。
暖房のきいているこの部屋で、冷や汗をかかずにはいられない日のほうが最近少ない。ぐらぐらと痛む頭を抑えながら、泣いているの頭を叩いて「元気出せ」と仕方なしにフォローすれば彼女は勢い良く顔を上げた。

「士郎くん」
「んー?」
「笑顔一人前!」
「……え?」

スマイル一丁頂きましたーと悪乗りするアヴェンジャーと苦い顔をするアーチャーに挟まれ……士郎はもう一度、に向かって意味がわからないとばかりに「え」と聞き返した。
……無論、彼女の言葉が代わることなく。
少しばかり淀んだ金色の瞳がにっこりと笑っている。とてつもなく、意地悪く。

「なんでさー!!」

彼の断末魔が聞こえてきた、そんな昼下がり。





「ああ、ハロウィンか」

かぼちゃのタルトを食べながら、アヴェンジャーの言葉には薄く反応を返した。
ハロウィンと言われても特別何かした覚えはあまりない。取り敢えず限定のケーキを食べて、南瓜の煮付けを食べて。どこぞの海外アニメでも有名なお化けシリーズを見て。そのぐらいだ。

「なあに、お化けでも見たいの?自分がそんなもんじゃん」
「人をお化け扱いすんな。どっちにしても見たくねーなぁ」
「じゃあいいじゃん」

ごちそうさま。反応の薄い彼女にアヴェンジャーは退屈極まりなくああそう、とだけ言葉を返した。
イベントのしがいのない女である。の片手に収められた赤い箱の菓子をかすめ取ると、一本だけ口に含む。チョコレートの甘い味が一気に広がって、思わず顔をしかめた。

「ちょっと、返してよ」
「うっせ、自分のタルト食ってろよ」
「最弱サーヴァントのくせに生意気な」
「うるせーよ!」

気にしてることいってんな。べしんと頭を叩けば彼女の頭はテーブルに思い切りぶつかった。
それにしたってハロウィンだといったからといっても、は目の前に居る男をみやる。彼はいつでもどこでも年中ハロウィンのような格好をしているので、全くを持っていつもと変わらない。トリックオアトリート!なんてイベントごとも大好きそうであるにもかかわらず、本日も寒そうな格好で赤い服を着用している。からすれば寒そうで、見ているだけで風邪をひきそうだ。

「何バカにしてんだよオイ」
「え、出てた?」
「犯すぞクソ」
「きゃーバゼットさーん」
「うあああウソですサーセンっしたああああヤメロよただでさえ俺何度か殺されてるんだぞ!」

真顔で言うアヴェンジャーに、は小さく笑った。十分な悪戯になったので、ありきたりすぎるトリックオアトリート、の言葉をつぶやけば心底顔色を青くさせてアヴェンジャーは「お前いつか本当刺されるぞ……」と小さくぼやきながら、彼女に自分も目下食べようとしていたかぼちゃタルトを差し出した。
……無言で彼女の腹に収まったのは言うまでもなく。
そんな異形な彼らのハロウィンはまだ続く。

2013.01.11
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