神を呪え。運命を呪え、そうして自分は立っている。
アーチャーの仏頂面に、は頭の中で勝手にキャッチフレーズを考え、そう呟いてみる。もれなく仏頂面かつ眉間の皺がよりいっそう増して、ぎらぎらと光る目が彼女を睨みつけただけで効果はイマイチだった。
「もう、そんな顔しなくてもいいじゃん。アンリそんな顔しなかったし」
「あれと一緒にするな」
大して変わらないくせに。言いたかった言葉を飲み込んで、はテーブルの上に鎮座したビスケットを口の中にいれる。
アーチャーという名前の主夫はよくもまぁ働いてくれる。これだって先程凛に言われて焼いたものだと聞いた。衛宮士郎という人間をベースにした人種はどうもこうも、みんな犬のようである、とは評価した。
無論、それは彼らからすれば不服極まりないのだけれど。
「……君はあの男と親しいようだな」
「あの、ってどれ?衛宮士郎?それともアンリ?」
「どちらもだ。あまり評価に値しないな」
それは、自分を見ているから?
がアーチャーと衛宮士郎とアンリ・マユをイコールで見たのは彼女がイレギュラーの体質だからかもしれない。一見して何処をどう見ても同一人物になり得ない彼らだが、昼も夜も関係しないにとっては彼らはニアリーイコールにすぎず、それでいて「別人」であった。
さくさく、さくさくと放り込む音だけが響く。
「君はここの世界の人間ではない。現界している私達とも違う」
「帰るすべがないのに「帰れ!」とか言われてもねえ」
「そうは言っていない。だが、君は馴染みすぎて本来の目的を忘れてそうだった」
「私がいつ帰りたいなんて言ったっけ」
私は今のところ帰る予定はないけど。
にこり、とが笑うと虚を突かれたのか、アーチャーは瞬きを何度か返した。そんなアーチャーにより満足しては再びさくさくとビスケットを噛り始める。夕飯が食べれなくなる、という心配はどうやら無用のようだ。
「変わっているな、君は」
「まあね」
「……私は賛成しかねるが」
「まぁ、まぁ」
そういう日だって、いいじゃない。ケタケタと笑う彼女の笑い方はどうにもこうにもアヴェンジャーのそれと似ていて、アーチャーはため息をそっとついた。
イレギュラーであるは、人を振り回す側の人間だということだ。
英霊になった今でも、どうやら凛込みで数多くの人間に振り回される日々は続くように思える。
「いいんじゃなーい、それでも」
はアーチャーの心を詠む。淀む金色の瞳につきつきと頭が痛むが、彼女はその目をする時人の心の奥底を引っぱり出すのだという。なぜそんなことができるのかと聞かれれば彼女は彼の特技と同じだと笑う。
「、人の心を読まないでもらいたい」
「正しくは見えちゃうんだもの。なんなら、アーチャーの格好してあげようか?」
彼女は彼女自身が見たくない、拒んだ部分から生み出された存在なのだという。自分が好きではない、という彼女にアーチャーは苦く笑いながらに何も言えなくなる。
「ビスケットおかわり」
「はいはい」
「ねえ、でもさぁ」
凛がマスターで、良かったんじゃないの。の言葉に、うっすらとアーチャーは笑って無言の肯定をしてやった。