はこの後どうする。
一掃したシャドウを踏みつけたランサーに彼女は両肩を下ろした。シャドウはペルソナでしか御することが出来ないとか言っていた人間に嘘つけ、と言ってやりたい。
サーヴァントがイレギュラーなのか、はたまたがイレギュラーなのかは置いておいて、彼女は自分の元に転がっていたシャドウに止めの一撃として踵から足を振り下ろした。
「まずはご飯からかな」
「お、マトモな発言」
「……ランサーは私のこと何だと思ってんの」
アヴェンジャーといい、ランサーといい、サーヴァントはドMなのだろうか。
バゼットに倣うかのようにファイティングポーズを取れば血がついていたはずの槍がくるりと舞う。
「ンなことより、どーすんだ、この山」
「消えるでしょ」
彼女がいうよりも前に姿を失い、シャドウは消えていく。はふん、と小さく鼻を鳴らしてランサーに向き直った。
「んで、飯はどうする。坊主んとこにでも行くか?」
「お財布事情的にもそうだといいかも。……眠いし」
深夜から現在午前8時まで、彼女はランサーを巻き込み戦闘に明け暮れた。
大体こういう時フォローに回れるリサーチ組の人間がいるものだが、悲しいかな彼女の周りにはアイドルはおろか熊のぬいぐるみすら居ない。
センセイやっちゃうクマ!と騒いでいた■■が懐かしい。……名前が出てこないのは致命的だが。
それはともかくとして、切り伏せて行く中でレベルアップの音が度々鳴る。どうやら聞こえているのは彼女のみのようだが。
「よー、坊主や嬢ちゃんもそろそろ勘付いてるだろーが」
「だとしたら尚更、自分のせいなんだからやるしかないでしょ」
彼女が来たせいで歪みでたシャドウ。失われたテレビの向こう。……の、筈なのだが。テレビに映る冬木の光景に、彼女は芽を潰しにかかる。
テレビの中は変わらない。
ともすれば。
「ココはいつからテレビの中になったのかしら」
んなわけねえ、というランサーの言葉は無視だ。
「しかし、テレビに映ったやつはなんともねーな、壊れてねぇし」
「そうなる予兆を凌いだのかもしれないでしょ」
さしずめ、マヨナカテレビの進化の類、ミライテレビとでもいったところか。
シャドウが食い散らかし、その中心人物が襲われる……というわけでもないらしい。
ランサーは眠た気に欠伸を噛みしめると、の背中をバシバシと叩いた。
「取り敢えず、どーにか誤魔化してやるよ」
「……どうやって?」
士郎はともかく、凛の眼は誤魔化されないだろう。慧眼である彼女には一苦労させられる。加えて現段階ではバゼットもいる。ただでさえランサーがいる手前、派手に知られるのは避けたい。
「……テントで一夜過ごしたとか」
「却下」
照れるわけでもなく、どちらかといえば侮蔑の眼を向けるにランサーはシニカルに笑った。笑ごとでは無いというのに。
「喰ってもいいのにお預けこっちは食らってんだからいい目見てもいいだろーが」
「猛犬は待ても出来ないの?凶犬が主噛まなかったのに?」
笑ったの頭をグリグリ抑えながら笑顔でランサーが犯すぞ、と言ったのは無視することにしよう。
「あ」
「お?」
「おなかすいた……」
動き回って叩き潰し続けて、フレーバー棒では限界があるのだろう。がくりと項垂れたを片手で抱きとめると薄く瞳を開きながら彼女は呟く。
毒気にあてられたのか、邪気に反映されたのか、オリジナルに何かあったのか彼女の瞳は鈍く光を失っていた。
影は影。
オリジナルにはなれない。ゆらりと彼女の前に同じが現れる。オリジナル……ではない。彼女と同じ眼をしていた。
「の影、イレギュラーの影。……あなたの居場所はもウ、ナイ」
影を失った彼女を補うように、彼女からうまれた仮面は受け入れられ溶け込み、オリジナルは生きていく。
は、あの世界には、不要なのだと同じ顔をしている女は笑った。
「……ええ、もう一人の私。知ってた」
「デモ、もう影じゃない。光、デもナイ」
不安定になるに、ランサーは顔をしかめ、どっちだろうとどうでもいいことだと鼻で笑った。
「わたしの、ペル、ソな」
そうね、それはあなたの。やがて、彼女は姿を消した。
目を覚ましたは心底うんざりしたように顔色を悪くしながら、呻く。
……彼女は何か。
その問いに答えを誰も持たない。
ランサーは頭をぐしゃぐしゃにしながら、バカだと小さく笑った。
倒れこんだ彼女をおぶり、衛宮邸に行くや否やバセットが彼女を姫抱きにして部屋に駆け込んで行ってしまう。
……お陰でとんだとばっちりの挙句、彼女が再三口を閉ざし続けた怪異の全容をマスターに喋る羽目になり、起きたには文句を言われ、今まで沈黙していたことをバセットには文句を言われる板挟み状態になった。
「……俺、悪くなくね?」
「自業自得って奴じゃあネーノ?」
アヴェンジャー(外見は衛宮士郎)に同意するようにアーチャー(未来の衛宮士郎)と衛宮士郎は漏れなく頷いた。
……解せぬ。